『 横顔 ( プロフィール ) ― (1) ― 』
§ フランソワーズ・アルヌール嬢の見解
タタタタ −−−−。 た。
結構忙しない調子で近づいてきた足音が ぴたり、止まる。
これは いつもの、毎日のことなのだ。
え ・・・?
玄関に なにか あるの?
まさか・・・
ああ なにか忘れたコトでも
思い出したのかしら
最初は ぎょっとしたし、いらぬ心配もしたけれど
― そのうちに < 真意 > がわかったので
今では 普通に聞き流すことにしている。
いちいち耳を欹て 気を揉んでいたら それこそ、身が持たない。
・・・ ああ 帰ってきたのね
それじゃ ―
彼女にとってやりかけの仕事 − 縫い物とか料理とか −
の手を止め玄関に向かう 合図 にもなっているのだ。
玄関ドア前は しばらく静寂が訪れる。
ヒトの気配はしっかりあるので おそらく彼はそこで
意志的に 脚を止めているらしい。
す〜〜〜 は〜〜〜〜 呼吸音が聞こえる。
マチガイなく深呼吸をした後なのだろう、彼は 息を弾ませ
ちょぴっと頬を紅潮させ玄関のドアを開ける。
( 鉄壁のセキュリティ は 音声に反応し難なくドアを解放する )
そして − なんだかあやふやなトーンで言う のである。
「 た ・・・ ただいまあ〜〜〜〜 」
「 はい お帰りなさい ジョー 」
この時までには玄関にでて アルバイト帰りの彼を労うのが
フランソワーズの習慣になり始めている。
「 あ ・・・ え えへへへ ・・・ た ただいま ・・・
ふらんそわあず 」
ここで 彼は真っ赤になって俯いてそしてまた顔をあげ
に〜〜〜っこり笑うのだ。
あは ・・・
いっつも思うけど
・・・ かっわいい 〜〜〜〜
フランソワーズもつられてごくごく自然に微笑みそうになってしまうのだ。
あ ・・・と。
笑っちゃダメよね
日本人って 真面目だから
挨拶は 真剣にしなくちゃ
彼女は表情を引き締め でも心を込めて言うのだ。
「 お疲れさまあ〜〜〜 ね ジョーの好きな < むしぱん >
つくってみたの。 味見 してくれる? 」
「 え! む む むしぱん〜〜〜〜?? ウチで作った??
うわっほ〜〜〜 むしぱん〜〜〜 ♪
了解 了解 了解〜〜〜〜 あ 手、洗ってくるねえ 」
ドタバタ ドタバタ ・・・・
彼はバス・ルームに駆けてゆく。
「 ・・・ なんだか 小さな弟でもいるみたい・・・
カワイイからいいけど うふふふ ・・・・ 」
誰も見ていないから 安心して? 笑顔になれる。
もさもさした茶髪をひょこひょこさせて行く姿が あの・009 だなんて
とて〜〜〜もとても信じられない。
BGだって 本人にこう訊ねるに決まっている ―
「 あのう スミマセン。 この辺りで 009、見かけませんでしたか?
・・・ 全然 見当たらないのですが 」
― ってね。
「 ま 一つ屋根の下で暮らすんだから 小さな弟 の方が
ず〜〜〜っといいけど ・・・
あ ・・・っと 蒸しパン、温めなおして ミルク・ティを
淹れておかないとね〜〜 そうそう お砂糖三杯だったわね〜〜 」
クスクス笑いつつ 彼女はキッチンに消える。
― こ〜んな具合に 何気ない日がゆるゆると続いている。
この邸の朝は 結構早い。
ご当主の老博士は 一番に起き出し近隣の散歩にでかける。
博士曰く 早朝散歩とは思索には最適な時間 なのだそうだ。
小一時間の散策の後 帰宅してくるころ
邸のキッチンからは いい香が漂い始める。
「 朝食、作ります! 朝はちゃんと食べないと ね 」
パリジェンヌはエプロンに朗かな笑顔で キッチンに立つ。
朝は オムレツ。 これは仏蘭西人としては譲れない。
ジャ −−−− ・・・
オムレツ専用のパンに バターを落とし ささっと溶いた卵を ・・・
「 あ! ああああ ・・・ あ〜〜〜 まとまらない〜〜
う〜〜〜ん バタ―が足りないのかしら 」
この家で暮らし始めてから 毎朝挑戦しているのだが
どうも イマイチ・・ 上手くゆかない。
仕方なしに熱いうちに 失敗作をちょちょっと整え食卓に並べている。
「 う〜〜〜 どうしてうまくゆかないのかなあ〜〜 」
パタパタ ・・・ スリッパの音が近づいてきた。
「 あ〜 フランソワーズ? ちょいと代わってくれるかな 」
「 ? 博士?? は はい ・・・ 」
「 ありがとうよ これはなあ〜 」
「 ・・・ わ ・・・ 」
カチャ カチャ ススス −−−−
老科学者は 案外手際よくオムレツを焼き上げた。
「 ・・・ ほい。 これでどうじゃな 」
「 へ え ・・・ お上手ですねえ 」
「 ほっほ〜〜 なに、若い頃は自炊していたのでなあ 」
「 え ・・・ 」
「 え ってなんじゃな〜〜 ワシだって若い頃はあったんだぞ 」
「 あ はあ それは もう・・・
でも 博士がキッチンでオムレツつくるって ・・・ 」
「 ふん 卵は完全食品じゃし手軽に料理できる。
卵の固まる温度と火具合を呑み込んでしまえば
オムレツは 化学実験と同じさ 」
「 か 化学実験 ですか ・・・ 」
「 そうさ。 さ 熱いうちに食べようではないか 」
「 あ はい コーヒーも ああ いい具合ですわ 」
コポコポコポ −−− コーヒーメーカーが いい香をまき散らす。
「 ふんふん ああ 好い香じゃな 」
「 はい。 パンもさっとトーストしましたし・・・
あら ジョーは ? 起こしてきますね 」
「 ― 寝坊大王 は 放っておけ 」
「 ねぼうだいおう ですか ・・・ 」
「 アイツ、 朝食に間に合った試しがないではないか。
だいたい 朝食は6時半 と最初に決めてたはずじゃ。 」
「 ・・・ ええ 皆で決めましたわね 」
「 だろう? その場にアイツもいたはずじゃな 」
「 はい。 皆と居ましたわ。 」
「 じゃから。 遅刻者に朝食は ナシ。
さあさ 美味しいうちに我々で頂こうではないか 」
「 ふふふ そうですね あのね 今朝はウチの温室で採れた
サニー・レタスとバジルのサラダを作りました
いいオリーブ・オイルがありましたので・・・ 」
「 ほうほう 採れたてかい 嬉しいのう では 」
「 はい 」
いただきます。 二人は唱和して フォークを取り上げた。
「 〜〜〜 ふむふむ 新鮮な野菜は味が違うのう〜〜 」
「 博士のオムレツ 美味しい〜〜〜〜 ふわふわ〜〜 」
二人が 朝陽の中、味も雰囲気も会話も楽しみ 今日の予定など
報告しあっている頃 ―
バタバタバタ −−−−− 階段が軋るほどの音がして
「 お お おはよう〜〜ございます〜〜〜〜〜 」
バタンッ!!! ウワサの主が飛び込んできた。
一応 パジャマではないが − もともと跳ね気味の茶髪は爆発し
口の端には 歯磨きが付いていた。
「 ジョー。 顔 洗い直してこい。 歯磨きがついとるぞ 」
「 ジョー。 洗濯、第二陣もあるから そのシャツ、着替えて?
・・・ 昨日の でしょ? 」
「 えっ??? あ あ〜〜〜〜〜 」
アリーナからのブーイングに 彼は口の端を慌てて手で拭い
シャツを脱ぎつつ − バスルームへと退場していった。
「 ジョーぉ〜〜 そのシャツと 使ったタオル、洗濯機に入れて
< 開始 > と < 通常 > のボタン 押しておいてね〜〜 」
「 りょ りょうかい ・・・・ 」
返事に遅れない?ほどの速さで ご本人は戻ってきた。
「 あ あの ・・・ あさ ごはん ・・・ 」
「 はい ジョーの分。 オムレツ 冷えちゃったかも 」
「 わあああ〜〜 たまごやき だあ〜〜〜
え? いいよ いいよ 冷えても美味しいも〜〜ん
うわ うわ ・・・ いただきまあす 」
「 はい コーヒー と サラダ。 パンはもうすぐ焼けるわ 」
「 ありがと〜〜 うひゃあ 朝からご馳走だあ〜〜 」
彼はほっんとうに嬉しそうに 食卓につく。
「 いただきます 」
そして神妙に手を合わせ目を瞑り唱えてから わくわくした表情で
箸を取り上げるのである。
「 う わ〜〜〜 ウチのたまごやき だあ〜〜〜 ん〜〜〜 んま!
サラダ・・・ あ〜〜 このドレッシング 好きかも〜〜 」
これは彼女にむかって言っているのではなく − 完全に独り言 なのだ。
・・・ つくづく変わったコねえ
ま 迷惑かけるわけでもないから
放っておきましょ
そりゃね わたしの恋人だったら
ぜ〜〜〜ったい直してもらうけど?
彼は < 同居人 > ですものね
余計な口だしは無用 ってことよ
フランソワーズは この賑やかな独り言を聞き流し
さっさと食卓を片づける。
食後の食器洗い は この茶髪クンの担当である。
「 わたし 今日は 出掛けるから・・・
ジョーも出るなら 戸締り、お願いね 」
「 あ うん いいよ 博士は? 」
「 都心でね 学会があるのですって 」
「 ふうん ・・・ 」
「 ジョーは? 」
「 ぼくはぁ〜 コンビニのバイトさ。 今日は午後シフト
帰りは遅くなるから 先に寝てていいよ 」
「 そうします。 夜の戸締りもよろしくお願いします 」
「 了解 」
「 では お先に。 」
「 ・・・ あ あ〜〜 いってらっしゃい 」
「 はい 行ってきます 」
「 あ〜〜 あの! 洗濯モノ・・・ そのう、第二陣だけど
乾しておくので とり込んでクダサイ 」
「 はい 了解。 ジョーも気をつけてね 」
「 うん! あ ・・・ 了解 」
じゃあね と 軽く手を振る彼にちょっと会釈してから
彼女はキッチンを出た。 口元に湧き上がる微笑を隠しつつ・・・
まだ知り合って間もないころ ―
・・・ つまり 極東の国で海に近い邸で暮らし始めた頃であるが ・・・
フランソワーズは多大なる興味と関心をもって ジョーを観察していた。
なぜなら そのヒト は 彼女がようく見知っていた同じ年頃の
男の子たちとは か〜〜なり違っていたから。
ふうん ・・・ 随分とマメなヒトなのねえ
掃除とか買い物とか気軽に引き受けてくれるし・・・
ああ そうね
ご飯の後片付けとか 必ず引き受けてくれるわね
・・・ 優しいのね
東洋のオトコノコって みんなそうなの?
ずっと 思っていたので ある時、思い切って聞いてみた。
彼は ぽかん、とした表情で目をまん丸にした。
「 え・・・ 優しいって、別に そんな。
家事とかは まあ〜〜 習慣 かなあ ・・・ 」
「 習慣?? オウチでも家事をすごく手伝っていたの? 」
「 ・・・ あ〜〜〜 あの ぼく さあ 施設で育ったからさ 」
「 ― え 」
「 全員が当番でさあ いろいろ家事をやってたんだ。
ってか やらざるを得なかったってトコかなあ 」
「 ・・・ ごめんなさい 余計なコト、きいて 」
「 別に気にしてないから ・・・
あ 明日の朝も あの卵焼き、食べたいなあ〜
ぼく ものすごくすきかも〜〜〜 」
「 あら 嬉しいわ。 ・・・ あの日本風の味じゃないけど・・・
いいの? 」
「 え? 日本の味だよ〜〜 バターの匂い、好きだし♪
おねがいします 」
「 はい 了解。 ・・・ あ アルバイトにゆく時にランチとか
いらないの? 」
「 あ〜 今は 午後〜シフトだから 大丈夫 」
「 そう? もし必要なら言ってね? サンドイッチでよければ 」
「 え え え〜〜 弁当、作ってくれるの?? 」
「 はい 」
「 うわ〜〜〜〜〜〜 マジ?? ウチから弁当、もってくって
憧れなんだあ〜 」
「 そうなの?? 外のカフェで食べるとかのほうが楽しいでしょう 」
「 そ〜れは不経済だし 」
「 ふけいざい?? 」
「 あ〜〜 外食は高いってこと。
それよりも〜〜〜 弁当、ホントにいいの?? 」
「 サンドイッチですけど それでよければ 」
「 いい いい いいです〜〜〜 うはあ 楽しみ〜〜〜 」
「 で いつ ジョーはランチを持ってゆきたいの ? 」
「 あ え〜〜とねえ ちょいまち〜〜 」
彼は ポケットからスマホをだすと ちゃちゃっと検索。
「 ・・・んん〜〜〜 あ 明後日から早番だった! 」
「 では 明後日の朝、用意しておくわ 」
「 うっぴゃ〜〜〜〜〜 うわあ〜〜〜 早番が楽しみ なんて
ありえるんだ??? うわ〜〜〜 」
「 ・・・ 」
彼のあまりの歓び方に ちょいと不安にまでなってしまう。
・・・ ほっんと 変わってる・・
お兄ちゃんなんて リセの頃は
ランチ? 荷物になるからいらね〜〜
だったし。
カフェで本を拡げつつオ・レを飲む とかが
シック! だったわよねえ・・・
― まあ いいわ。
二ホンのパンはふかふかで美味しいから
アレに あれこれ挟めば・・・
本人の希望に沿ってれば それでいいんじゃない?
・・・ それにしても 変わってるわあ〜
フランソワーズは 首を捻りつつも < ま いっか > と
ごくかる〜〜く考えていた。
− さて 島村クンが バイトのシフトが早番の日。
休憩 はいりま〜す ・・・と 膨らんだリュックを持って
外に出て − ジョーは 裏の駐車場 ( がらがら ) の隅っこ、
草地で 弁当の包を開いた。
「 ・・・ あ う わあああ〜〜〜〜 す げ 」
確かにサンドイッチ だ。 食パンに − チーズとハムの厚切り。
オムレツとトマトの輪切り。 たっぷりのイチゴジャム。 が
それぞれ挟まっていた。 パンだけで半斤はあるだろう。
さらに リンゴがごろん、と一個。 そして保温水筒には紅茶。
「 ・・・ こ れ 全部 食えるか ???
いや! 完食するんだ ジョー!! それが オトコだ!! 」
彼は姿勢を正し、 いただきます と手を合わせると。
猛然と そのヴォリューミーなサンドイッチに挑み始めた。
「 ただいま〜〜 ランチ、ありがと! すごく美味しかったよ 」
その日 帰ってくると 彼はにこやかにランチョン・マットをリュックから出した。
「 これ 洗濯機、でいい? 」
「 ええ ・・・ まあ全部食べてくれたの? 嬉しいわぁ〜
あ あの分量で足りたかしら・・・ 」
「 あ うん。 ・・・ ちょうどいい分量だったかな〜〜 」
「 そうなんだ? よかった〜〜 」
ふうん ・・・
あれが 彼の適量 なのね
わかったわ
パンの量も フィリングも このセンでゆくわ
我が意を得たり と フランソワーズは冷蔵庫の中身を
確認しつつ こそ・・・っとにこにこした。
「 あは・・・ あの ・・・リンゴは オヤツに回したけど 」
「 デザートに、と思ったんだけど ・・・
オヤツにしてくれたのね また 入れるわ 」
「 あ ・・・ うん ありがとう! 」
ホントはさ ・・・
まだ ポケットに入ってるんだ
もう 食べられなくて
ごめん と〜〜っても美味しかったんだけど
りんごまでは むり ・・・ だった
うん 夜 齧るからいいもんね
「「 ランチ って いいね〜〜・ いいわね〜〜 」」
他人の寄せ集め だったこの邸の住人達に なんとか淡い連帯感が
生まれたのである。
かな〜り 風変りな子だけど。
一つ屋根の下で暮らしてゆくのに
不愉快ではない わね。
ま よき隣人 ってとこね。
フランソワーズは < 風変りな子 > の 横顔にちらり、と
視線を走らせてから 安堵の吐息をはくのだった。
****************
§ 島村ジョー君の見解
第一印象? そりゃ決まってるさ。 彼女を見れば誰だってそうだろ
― 彼は長めの前髪で 顔を半分隠して 言う。
びっじ〜〜〜〜〜〜ん ・・・ !
「 それだけさ。 うん マジで。
だってあの時 ぼく 彼女の顔しか見てなかったもん。
彼女の声しか聞いてなかったもん。 」
ジョーは しれっとそう言ってのける。
「 え? 他のヒトの発言 ?? ・・・ あ〜〜〜
なんか周りにいっぱいいたよね。 白衣のおっさん・じいさん達やら
彼女の周囲には戦闘モノのメンバーみたいのが並んでたなあ ・・・
なんか言ってたけど ・・・ 全然覚えてない っつか聞いてないよ。 」
だけど キミはその戦闘モノのメンバー達と行動を共にしたわけだよね?
「 あ〜 そうかも ・・・
でもさ ぼくは 彼女の後にくっついて行っただけ なんだ 」
彼は そりゃ当たり前だろ? といった調子なのだ。
「 あんな美人にさ〜〜 こちらにいらっしゃい って言われて。
断わるオトコ、いると思う? ・・・ そういうことさ。 」
その彼女にくっついて行き メンバー達の中に迎えられ
― この地に辿りついた。
「 ・・・ 感想? そりゃ 生まれ育った国だもん、ほっとしたさ。
あ〜〜の美人と一緒に暮らせる〜〜〜 なんて もう最高! って
ヤベ〜〜〜 って密かに叫んだけど さ。 」
・・・ けど?
そう ― この邸で ごく普通の、当たり前の日々が始まったんだけど。
え。 彼女〜〜〜〜
なんだって いっつも怒ってるのかな???
・・・つか ずっと不機嫌なのさ??
ぼく ― なんもしてない ・・・よ?
早起きで きっちり朝食を作ってくれて ― めちゃ美味いんだけど
彼女は むす・・・っとしている。
あ ・・・ 怒ってる?
そっか ! アレだ、アレ。
ガイジンさんにはちゃんと言葉で言わないと
ダメだって。
黙ってるけど わかって ― じゃあダメって聞いたよ
ジョーは 食事の手を止めて顔を上げる。
「 あ あの〜 激ウマなんだけど 」
「 はい? あ なにか 味、足りないかしら 」
「 い いやいやいや〜〜〜 これでいいです、美味いデス 」
「 そう? よかった 」
「 ・・・ ハイ 」
彼は また慌てて皿の中身に視線を戻し、食べるコトに集中する。
― この時にチラ・・っとでも目をあげれば
彼女の輝く笑顔を 拝めるのであるが ・・・
そのことに ジョーは気付いていない まだ!
ちゃ ちゃんと 言ったもんね!
マジ 激ウマだから〜〜〜
あ ・・・ 怒らないでよぉ・・・
めちゃくちゃに嬉しいから マジ感謝してるから
ジョーは自分にできる目いっぱいの気持ちをこめて 笑顔!
だけど そんな彼を 彼女は真剣な視線で受けて止めるのだ。
・・・ なんか ぼく ・・・
嫌われてるのかなあ ・・・
あ やっぱイヤなんだよね?
違う国の 捨てられっ子 なんて さ
・・・ ごめん ・・・
なるべく目立たないようにするから
・・ 怒らないでよぉ
帰宅すれば 必ず迎えに出てきて おかえりなさい と言ってくれるけど
とても真面目な表情なのだ。
え。 なんかちょっと・・・ 怒ってる?
蒸しパンとか作ってくれて 超〜〜嬉しいんだけど ・・・
「 これが ジョーの好きな蒸しパン の味? これで いい? 」
って すごく真剣に聞くんだ。
そうなんだ この味、大好きなんだ!
だから ありがと〜〜〜〜って言ったよ
ねえ ・・・ 怒らないでよぉ
「 あ〜〜〜〜 ・・・ 」
ばったん。
二階の私室に戻ると彼はベッドに倒れこむ。
荷物もなんもかんも放り投げ キャップも被ったまま・・・
「 ・・・ う〜〜〜 ・・・ 疲れた けど。
ゴハン 美味しい ・・・ マジでうま〜〜い♪
シチュ―とか最高だよな〜〜 サラダってこ〜んなに美味しいんだ?
わっはは〜〜〜ん ・・・ 」
う〜〜ん と伸びをして ぼ〜っと天井を見上げる。
冷静沈着な美人 ・・・ 近寄りがたい・・・
けど カワイイ って思っちゃうだな〜〜
「 こんなコト、言ったら怒られちゃうよなあ ・・・
でもさあ 初めて会ったその日から♪ なんだもん。
はあ 〜〜〜〜 ・・・・ 」
な〜〜んてキレイな子なんだ 人形みたいじゃん・・
− 実は これが彼の彼女への第一印象 だった。
そう 人形みたい なんだ。
ねえ なんで 笑ってくれないんだよう〜〜〜〜
お願い 怒らないで
頼むから 笑顔みせて !
ぼくに向かって 笑ってよぉ
・・・ やっぱ ぼく、嫌われてる・・・?
― 彼は気が付いていない。 ほんの一瞬後に 振り返れば
そこには 彼を見つめている柔らかい笑顔 を見ることができるのだが。
このワカモノは ふつ〜の時 は 信じられないほどヌケサクなのである。
Last updated : 11.08.2022.
index / next
************* 途中ですが
まだ お互いに このヒトはどんなヒト? と
その横顔を こそ・・・・っと伺っている時代の話 ・・・
プロフィール って ステキな言葉だな〜〜